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今日は4月7日、私立武蔵広大高校の入学式である。澄み渡る空に、すがすがしさを感じるような天気の日だった。
「それじゃあ、いってきます。」
「フフフ、そんなにニヤニヤしてたら変な人だと思われるわよ?」
「に、にやにやなんてしてないよ。」
受験に受かった淳は今日からはれて私立武蔵広大高校の生徒なのである。武蔵広大高校は偏差値62なので、勉強面において中の中であった淳にとってはぎりぎりの高校だったのだ。淳は私立武蔵広大高校にあこがれており、こうして武蔵広の生徒になることを非常にうれしく思っている。だから隠そう隠そうと思っていても自然と口元が緩んでしまうのだ。
「おまたせーって、なーにニヤニヤしてんだよ。」
と、そこへ待ち合わせしていた雄二が話しかけてくる。
「ニヤニヤなんてしてないって。」
「いや、めちゃくちゃしてたぞ。ちょっと怪しかった。」
「そ、そうかなぁ。」
「ああ。ひょっとしたら不審者って通報されてたりしてな。」
「そ、そんなに。」
雄二とともに冗談交じりで学校に向かう。雄二も武蔵広に受かっており、武蔵広に入学した。
「そういや、おふくろさんは?入学式来ないのか?」
「いや、後から来るって。ほら、入学手式の説明の紙に書いてあっただろ?僕たち生徒の登校は8時半だけど入学式自体は10時から。その間に学校についての説明とかいろいろあるって書いてあったじゃないか。」
「へぇー、そうだったのか。読んでないからわかんなかったぜ。」
「読まなきゃ駄目だよ。大事なこと書いてあったらどうするんだよ。」
「だいじょうぶだ。お袋がしっかりよんでたから。そうか、だからうちのお袋も遅れていくようなことを言っていたのか。」
(相変わらず苦労していそうだな、雄二のおかあさん。)
「そんなことより、まだなのかよ、お前が少女を助けたって場所は。俺はそれについて知りたくてこんな朝っぱらから家を出たんだ。じゃなきゃもっと寝てたかったんだぞ。」
「もう少しいったところだよ。」
「ふーん。じゃあさきにあれ見せてくれよ、あれ。」
「ゴメン、ここではやれない。ここはかなり人が多いから誰かに見られちゃうかもしれない。」
「っと、そうだったな。わるかったよ。」
「ううん、だいじょうぶだよ。」
雄二の言っていたアレとはもちろん淳が少女を助けたときに使ったなぞの力である。順はほかの誰にもしゃべるつもりはなかったが、親友の雄二にだけはメールで相談に乗ってもらっていた。。しかし、春休み期間中なんどかあって遊んではいたものの、不思議な力についてお互い忘れていて結局その力を雄二には見せずじまいだった。そのことについて昨日雄二がメールを取り、こうやって少し早く家を出て、淳の不思議な力とそれがおきた現場を雄二に見せることになったのだ。
「でも確かにそんな力を持ってるって他人に知られたら普通変な目で見られるよな。それこそ化け物を見るような目で。」
「うん。僕もこの力についていろいろ考えたんだけど、この力は絶対に人に知られちゃいけないと思ったんだ。雄二みたいにお互いに理解が深いものにしられるならともかく、普通の人に知られたら化け物扱いをされるようになると思う。だからなるべくこのことはほかの人に話さないで。」
「ああ、わかってる。でも親御さんたちにも秘密なのか?」
「うん。僕がこんな力を持っていると知っても父さんも母さんも別に僕のことを変な目で見たりしないと思う。でもやっぱり余計な気は使わせたくないんだ。」
「わかった。」
「ありがとう。」
「ここだよ、雄二。ここがその場所だ。」
淳は右手を前に出し、その場所を示して言う。
「へえ。確かにこんなところで襲われたら助けは期待できないな。お前もよく悲鳴を聞こえたもんだよ。」
「僕が聞いたのは悲鳴じゃないんだけどね。それと雄二、これを。」
淳はバックを開け、中から水の入ったペットボトルを取り出す。そしてふたを開け念じる。すると中から水が出た着て中に球体を作りながら浮かぶ。球体といっても完全な球ではなく、宇宙にある水のようにブニョブニョした感じである。
「なるほど、これが。」
雄二は腕を組み、右手をあごに当てて言う。
「うん。こうやって浮かせるだけでも少し疲れるかな。人を吹き飛ばすくらいの水量と水圧となるとかなり疲れるかな。うーん感覚で言うとおもっいっきり走り回ってるくらい・・・。うーんそれだとかなり言い過ぎかも。」
「でもその疲れってのは精神的な門で肉体的にはぜんぜん疲れちゃいないんだろ?」
「うん、そうなんだ。詳しいことはまだわかんないけどね」
「まあ、それはおいおい調べてみればいいだけだけどな。」
淳はポケットから携帯電話を取り出し時間を見る。そろそろ学校に行かないと間に合わなくなる時間だ。
「さあ、そろそろ学校に行こうよ。初日から遅刻は恥ずかしいじゃない?」
「あまいな。そういうやつのほうがみんなに顔を覚えてもらうのが早いんだよ。」
「い、いや。僕は遠慮するよ。」
学校に着き、掲示板で自分たちのクラスを確認する。幸か不幸かはわからないが、雄二と淳は同じクラスであった。二人で自分のクラスに向かう。自分のクラスの前に着き、ドアを見てみると座席表が張ってあった。
「何だよ、席決まってんのかよ。せっかくかわいいこの隣に座ろうと思ってたのによぉ。」
雄二のボヤキを無視して淳は自分の席に向かう。淳の席はドア付近の列の前から二番目だ。ちなみにドアは教卓から向かって左側の壁に二つついている。
「おいおい。俺、教卓のまん前じゃん。最悪。」
「?雄二はどうせしっかり授業受けるんだしいいんじゃないか?」
淳の言葉に対しあきれた顔をして雄二は答える。
「あのなぁ。どんなに勉強熱心なやつでも相当な変わり者でもないかぎり、教卓のまん前はいやだろ。」
「まあ、確かにそれもそうだね。」
「サイアクだぜ。」
「あ、あのぉ。」
雄二と話していると淳はいきなり話しかけられた。淳はそちらを振り返る。
「あっ、君は。」
そこには依然助けたあの少女が立っていた。
「あ、あの、あの時は本当にありがとうございました。」
「い、いや。こちらこそ。」
「おい、淳。誰だよ、このかわい子ちゃんは。」
二人で話していると雄二が割り込んでくる。
「あ、ああ。ほら、今朝はなした・・・。」
「今朝って、アレか。お前が助けたっていう?」
「うん。そうだよ。それにしても驚きました。まさかあなたもこの学校に来ているなんて。」
「ちょっと待った。君、このクラス?」
「え?あっ、はい。」
「だ、そうだ淳。てことで敬語はなしだ。いいよな?」
「は、はい。」
「そか、ありがとよ。それと君も俺たちには敬語使わなくていいからな。」
「おい雄二。まさかもう口説きはじめんのか?」
雄二にひじをつき、淳は少女に聞こえないよう声を小さくして言う。
「んなわきゃねえだろ。さすがに親友の恋を横取りするような趣味はねえよ。」
「僕の恋?」
雄二の言葉が理解できず、淳はきょとんとする。
「そういや自己紹介がまだだったな。俺は雄二、谷本雄二だ。んで、こっちが。」
「浅野淳です。よろしく。」
「あっ、はい。渡辺麗佳(わたなべ れいか)と申します。よろしくお願いします。」
「敬語はなしっつったろ?」
「えっ?あっ。すみませんでした。」
雄二は肩をすくめる。そんなところでドアが開き、スーツ姿の男性が入ってくる。身長は普通で髪も特に茶髪とかではなく、特に短いわけでも長いわけでもない。しかし、鋭い眼光と赤い瞳が非常に特徴的である。おそらく彼が先生であろう。
「ほーら、みんな席に着け。ドアの入口んところに席が張ってあっただろ?ちゃんとその通りに座れよ。」
男は言うと黒板に『赤羽 慎』とかき、そして教卓につく。
「俺は赤羽慎(あかばね しん)。このクラスの担任になったものだ。よろしくな。といってもあらかじめ言っておくが、教師ってのは今年から初めてでいろいろ不憫をかけると思う。みんな、そんなわけだからよろしく。さて、挨拶はこれくらいにして・・・。」
と、そこへ生徒の一人が手を上げる。
「しつもーん。どうして教師になりたての先生が担任を持っているんですか?」
「ああ、なんかこの学校、教師があんまりいないみたいでな。俺もこの学校に来て詳しく聞いたわけじゃないからそこまで詳しくはわからんが。さて。俺への質問は後にする。とりあえずこの学校についてとか授業についてとか話さなきゃなんないんでな。」
そういうと赤羽はこの学校や授業についていろいろ説明しだす。そんな中で、「俺の授業は厳しく行くぞ。」といったときにすごいブーイングが起きる。
「安心しろ、お前ら。厳しくって言っても宿題をめちゃくちゃ出すとかはしない。ただ、俺の授業中に私語は厳禁。質問があれば友達に聞かないで挙手、授業中居眠りしてたらたたき起こす。あんまりにも授業態度が悪く反省しないやつには、体罰さえも辞さない。」
そういう彼の瞳は反論を一切受け付けないほどの強さがあった。
「・・・。以上で説明は終わりかな。今まで話した中で質問があるやつは?」
赤羽の説明は非常にわかりやすかったのか誰も手を上げない。
「ふんふん、質問はなしか。うーん、すこし時間があまったな。よし。じゃあ俺がどうでもいい話をしてやろう。ああちなみに、今は寝ててもいいぞ。さて何を話そうか。」
昨日しっかり寝てきた淳には眠れなかった。そのため話を聞いていたがつまらなくもなく、むしろ人生についての教訓になった部分もあった。
「お、もういい時間だな。さあ、じゃあ入学式に行こうか。」
入学式が終わり、教室に戻り、先生の話も終わる。その後全員の自己紹介をする。その次が面白く、6人グループでディベートをやらされた。テーマはなんでもよかったらしく、『地球温暖化についてCO2削減と緑を増やすことのどちらを優先すべきか』というものになった。このディベートでは一人が必ず二回以上発言しなければならず、さらにターン製で行った。話す人の順番が決まっており、一言で反論、または新たな案をいうと次の人のターンになるというものだ。そのディベートは白熱し、ディベートを通して同じチームだけでなく、敵対したチームとも仲良くなることができた。赤羽いわく、『仲良くなるならゲームが最高。さらにディベートなら、お互いの思考パターンまで浮かんでくるから尚いいと思う』という考えは大成功したようだ。
そしてようやく学校が終わり、淳は下校の準備をする。そこに一人の男性が話しかけてきた。
「きみ、ちょっといいかな?」
「はい。なんでしょう?」
「いや、ちょっとここじゃあ話しずらいから屋上についてきてくれるとありがたいんだけど。」
彼の胸には二年をあらわすバッジがついていた。むげに先輩のお願いを断ることもいけないと思った淳は彼について屋上に向かう。
屋上の扉を開けると風がなびく。淳とその男の髪がふわっと踊る。
「あの、なんのごようでしょうか?」
すると突然、男の雰囲気ががらりと変わる。
「お前、二月ごろに四人組の男を倒しただろ。」
「え?」
その言葉を聞き淳はわけがわからなくなる。
「こたえろ。」
淳は返答に悩む。なぜこの男がそのことを知っているのか。この男は淳が二月に倒した男たちの中にはいなかったはずだ。そしてあの場所での目撃者は男たちと麗華以外はいないはずだ。なのになぜこの男はそのことを知っているのか。
「この沈黙。イエスと取らせてもらう。」
男はポケットからスタンガンを取り出す。淳はびっくりし思わず数歩下がってしまう。
「なるほど。俺の武器が近距離用だとわかって距離をとるか。」
男は淳が下がったのが淳の作戦だと思っているようだ。
「だが・・・。あまかったなぁ!」
「ぐわぁ。」
スタンガンから突然電気が淳にめがけて飛び出してくる。淳はとっさによけることもできず、電気をモロにあびてしまい、そのばに倒れる。
「はっはっはっはっは。特別な力が使えるのがお前だけだと思うなよ。」