E−XAMY

   22

 楓は意識を取り戻すと辺りを見回す。そこは先ほど戦ったところであり、淳たちがそこに座っていた。

「僕は……。そうか。なあ、僕はいったいどれくらい気絶していたんだ?」

「あ、もうおきたんですか。そうですね。大体五分くらいだと思いますけど……」

 そういうと淳は雄二のほうを振り向き確認する。雄二はそれに首を縦に振ることで答える。

「殺すチャンスはいくらでもあったはずだ。なのになぜ殺さなかったんだ?」

「別に僕たちは貴方を殺しにきたわけではありません。それに貴方たちのリーダーにしたところで殺すつもりはありません」

「なんだと? 僕たちを倒したいんだろ?」

「僕たちはただ貴方たちを止めたいだけです。殺したいわけじゃあありません」

 その答えを聞いて思わず楓はふきだしてしまう。

「最後に僕が喰らったあれはいったいなんだったんだ? 水じゃあなかったみたいだし」

「あれは、氷です」

「そうか。付加能力か」

 付加能力。それはある能力者が覚える第二第三の能力。ただそれはあくまでもともと持っていた能力に関係があり、その能力をバックアップしたりする能力である。ようは能力が進化して、そういう使い方も可能になったものなので実際に第二第三の能力ではない。

「はい」

「ははは。君は素直だね。そういうのは敵に教えちゃ駄目じゃない」

「あ」

「はっはっはっはっは。本当に面白いなあ。痛っ」

「まだ動かないほうがいいですよ。僕も結構本気でやりましたし」

「そうみたいだね。しかし氷を操る能力か。いったいいつ覚えたんだい? 報告にはそんなのなかったし」

「いえ。僕は氷なんか操っていません」

「え? でも僕に喰らわしたのは氷だろ? だったら……」

「確かに貴方に当てたのは氷です。でも僕は氷を操っていたわけじゃあないんです」

「どういうこと?」

「僕の能力は水の操作です。そして付加能力は水の状態変化。つまり水ではない氷や水蒸気は操れません。氷を直接操って貴方に当てたわけじゃあないんです」

「?」

「僕は水を操って貴方に向かって思い切り飛ばしながらその水を氷に状態変化させたんです。氷になってしまったら操れませんが慣性力で貴方のほうに飛んでいく仕組みです」

「な、ばかな」

 動いている物質に状態変化とかそういったことをやるのは相当難しいと楓は聞いたことがあった。しかも自分で操りながらそんなことをやるなんてことはもっと難しいだろう。それを能力を覚えたてのやつがやったとなると相当だ。楓は非常に驚いてしまった。

「そんなことがもうできるだなんて。君たちは能力を覚えてまだ間もないはずだ」

「はい。でも貴方たちのリーダーに負けたときから昨日まで僕たちは本当に死ぬ気で鍛えてきました。赤羽先生との特訓も以前よりきついものですし、その後、自分の家でもかなり練習したんです。そんななかで僕の付加能力も目覚めました」

「そうか。それだけ特訓を重ねたのか」

 楓は言葉以上に淳の目からそれを判断した。おそらく淳たちは本当に死ぬほどと言う言葉が十分なほど、特訓を重ねたのだろう。

「それと僕は主に能力をうまく使うことを重点的に鍛えていきました。そのほうが戦術的に戦えると思ったからです」

「ちなみに俺はパワーを重点的に鍛えたけどな」

「そうかそうか。ふ。君たちには負けたよ」

 楓は心のそこから負けを認めた。確かに実力は自分のほうが上だが、それだけの特訓でこの短期間でここまで強くなり、そして実際に自分に買ってしまったのだから。

 そこに運の要素は一切なく、それは純粋な勝利だけだと楓は思った。

「それで君たちは僕をどうするつもりだい?」

「質問に答えてください。貴方たちのリーダー、白藤聡介の居場所はどこですか?」

「それは答えられない」

「な、てめえ。ふざけんじゃねえぞ」

「君たちには悪いがそれは答えられない。僕にも答えられないことはある。たとえ死んでもね。いや、死ぬよりひどい目にあっても」

 淳は楓の言葉を目を見て、と言うよりその真剣な雰囲気を感じて本当だと判断する。

「てめえ」

「やめろ、雄二。たぶんこの人は本当にいわない」

「でもよう」

「われらが盟主の所在地は言えない。だがしかし答えれる質問には答えよう」

「なんだと、てめえ。どうせ全部の質問に答えれないとか言うんだろ」

「いや、そんなことはしない。僕は敗者だ。だから勝者の言うことはきく。ただ、どうしても答えられないことはあると言う話さ」

「わかりました。それで大丈夫です」

「淳、いいのかよ」

「うん。その代わり約束してください。答えれる質問にはちゃんと答える、と」

「わかった。約束しよう」

「まず一つ目、貴方たちのリーダー白藤の能力は風を操る、でよろしいですね?」

「ああ、そうだ」

「なんだよ、そっちの質問のほうが答えられないだろ、普通」

「たしかにわれらが盟主の能力を言えって質問だったら答えられないね。でも今の質問は間違いなくただの確認だ。だったらあえて答えられないと言う必要もない。どっちにしたって君たちにばれているわけだから。ただ僕も質問させてくれ。きみはどうしてそのことを知っている?」

「以前戦ったときにそんな感じがしたからです」

「なるほどな」

「では次の質問です。と言うよりこっちも確認と言ったところですが」

 そういうと淳は封筒を楓に渡す。それは昨日知らない男からもらった、敵の情報が入っている封筒だ。

「その封筒の中身の情報に間違いがないか教えてください」

「へえ。これはすごいね。これだけの情報が……。赤羽御用達の情報やは優秀だとは聞いていたけどここまでとはね。うん。間違いはないみたいだよ」

「わかりました。では次の質問です。4本槍の最後の一人、苅部の実力はどのくらいですか?」

「どのくらいって言われてもねえ。実力だけで言えば君たちよりは強いかな。ただ、僕ら4本槍では一番弱いよ。君たち二人がかりでしっかりと策を練れば勝てると思う。能力はそこに書いてあるとおりだよ」

 楓は淳に返した封筒を指差す。

「わかりました。では最後の質問、と言うよりお願いです。ここであった僕らの情報をなるべく貴方たちのリーダーや仲間に教えないでください」

「なるべくってどのくらいだい?」

「僕らがあなた方の情報を握っていると言うこと、僕らの実力、能力、そして僕らがどうやって貴方に勝ったかも」

「うーん、君たちの能力はわれらが盟主は知ってるけどねえ。まあ、付加能力については秘密にしといてあげよう。それと、実力はある程度は教えちゃうかな。僕が負けるとなるとその程度の実力はあるってことだから。それとどうやって勝ったかについてもぼかす程度のことしかできないね。それでもいいかい?」

「はい。それでお願いします」

「オーケー、わかった。ほかに何か要求は? 一応いっておくけど、ここでわかれたらもう僕は君たちには何も教えないよ。敗者として役目を果たし終えた後だからね」

「じゃあ、もうひとつだけいいですか」

「なんだい?」

「僕らがあなた方のリーダーを倒しに行くとき貴方には手を出さないでほしい」

「なるほど。しかし確約はできないな。たとえば君たちが何十人もの仲間を連れて乗り込んできたりしたらさすがに僕も応戦しなきゃいけないからね。ただ、君たち二人だけで来るなら、約束しよう。君たちには僕は負けたってことでこの一件で僕は君たちに手を出さないっていうめい目がたつからね」

「ありがとうございます。じゃあ、僕たちはこれで」

「ああ。少年たちよ。グッドラック」

「今日は、すみませんでした」

 淳はお辞儀をし、雄二はぷいっを楓から視線をはずす。それに対し楓は笑ってしまった。

「敵に謝るやつがいるかよ」

 楓はひとしきり笑うと二人が帰っていった道とは反対側の道から帰るのだった。