E−XAMY

 

   3

重い体を起こして何とか淳は立ち上がろうとする。しかしそんな淳に男はまたしても電気を飛ばしてくる。

「ぐわっ。」

 淳はまた倒れてしまう。

「はっはっはっは。弱い、弱すぎる。」

「な、なんでこんなことを。」

 自身に対し、いきなり攻撃を仕掛けてきた男に対し、淳は疑問を口にする。すると男はそれに対し答えた。

「雇われたからさ。」

「やと、われた?」

「ああ。俺は倒し屋ってのをやっててな。お前が二月にぶちのめしたって言うあいつらに雇われたんだよ。しかし、ひょうしぬけだぜ。お前が俺と同じく特別な力を持っているって言うから少しは楽しみにしていたのに。ただの、一般人かよ!」

 男は倒れている淳を思いきりけりつける。

「はあ、興ざめだ。じゃあ死んでくれ。ああ、安心しろよ。死ぬって言っても半分だけだから。」

「くっ。」

 なすすべがなく淳はただ男が自分に暴行を加えるのをただ待つだけだった。

 

 

そんな瞬間突然バン、と勢いよく屋上のドアがひらいた。そしてそこには雄二が立っていた。

「やめろっ!」

「なんだ、おまえ?」

「ゆっ、雄二。どうして?」

「一緒に帰る約束してただろ?なのにお前は一向に来ないからな。そんでお前がその先輩っぽい人と一緒に屋上に行くのを見かけてたの思い出して、俺も屋上に行ってみようと思ってきてみたらいきなりお前の悲鳴が聞こえてな。だからきたってわけよ。」

「ふん。雑魚が一匹増えたところで。」

 しかし男はすぐに冷静になり、雄二に向かって電撃を飛ばす。

「雄二、逃げろ。」

「へ?」

 男の力について何もわかっていない雄二は思いっきり電撃を浴びてその場に倒れてしまう。そしてその表紙にポケットから携帯電話やら、ライターやら、いろいろなものが落ちる。

「ぐへっ。」

「はっはっはっは、何しにきたんだ、その男は。マジでうけるぜ。」

「お、おまえ・・・。」

 体の全神経をつかって淳は立とうとする。

「おっと。」

 しかし男は電撃を飛ばしそれを阻止する。

「ぐわっ。」

「ははは。お前は俺と同じで特別な力を持っているみたいだからな。おまえにゃ自由を与えねえよ。」

(くそ、くそ。)

 確かにこの男は淳と同じく特別な力を持っている。しかし能力の使い方は単純でただ電撃を飛ばすだけである。実際この男の能力は生命体外にある電気を自由に操る能力だ。だがこの男は実践ではそこまでうまくこの能力を扱うことができない。つまり、この特別な力のレベルとしては淳とほとんど変わらないといってもいい。ではなぜ淳が一方的にやられているのか。まず最初に不意打ちで一撃もらったことも大きい。淳の性格が好戦的でないこともその要因のひとつであろう。しかし一番の要因はここが屋上であるということだ。確かに屋上には貯水タンク内など、水はあるにはある。しかし貯水タンクの水をどうやって出して使うのか。淳の今の力のレベルでは貯水タンクをぶちやぶることもできない。かといってほかの場所にある自由に動かせるだろう水はこの位置からでは遠く、淳では動かせない。つまり淳はこの場所では能力が使えないのだ。ゆえに淳は一方的にやられているのだ。

(くそ、せめてどこかに水があれば……。)

 そのとき淳は気づく。雄二のポケットから落ちたライターに火がついているのを。

「ま、まずい。」

「安心しろよ。もうそろそろとどめにかかるから。」

 男は完全にライターに気づいていない。このままでは学校が火事になってしまう。速くとめなくては。

だがそのとき、火が若干変なゆらめきをしたように感じた。一瞬のゆらめきだったが、火がまるであの男に飛びかかろうとするようだった。

そして気づく。雄二がおなかを押さえ、必死に立ち上がっていることを。

(今のは、ひょっとして・・・。)

 もう一度ライターに目をやる。と、今度はあの男に向かって火がものすごい勢いでライターから噴射されている。火の長さは20センチくらいになるであろうか。通常ではありえないことだ。そして淳は確信する。

(僕でもない。そしてあの男でもない。だったら……。)

 その瞬間、火が男に向かって飛ぶ。しかし、男はちょうど淳の視線が気になり、その先を見ようと振り向いたところだった。

「うおっ。な、なんだ?」

間一髪で男はよける。そしてその隙に淳は叫ぶ。

「雄二、火だ。僕が水を操れるようにお前は火が使えるみたいだ。」

「え、なに?火?ああ、なるほど。OK、わかった。ナイスだ、淳。」

 そして雄二は火のついたライターに眼をやり念じる。あの男を襲えと。するとライターから出た火が男へせまる。

「ふっ。」

 しかしそれは一瞬遅く、男が雄二に向かって電撃を放つほうが早かった。

「ぐわぁ。」

 雄二は倒れる。そして男に向かっていた火も、普通のライターの火に戻ってしまう。そのライターに男が近づき、火を消す。

「あぶねぇ、あぶねぇ。まさかこの男も力を持っているとは思わなかったぜ。だがこれでもうやつの力は使えまい。ま、もう気絶しているみたいだから関係ねえけどな。これでようやく終わりだな。ふっふっふ。あっはっはっはっは。」

 

 

「そこまでだ。」

 そう、静かな声がひびく。淳も男もそちらを見る。そこには淳たちの担任が鋭い目つきで男をにらみつけ、片手に何か持ちながら立っていた。いったいいつからそこにいたのだろうか。彼が声をあげるまでまったく気がつかなかった。とはいっても彼はそこに来てすぐに声を出したのだが。

「小笠原健人、お前が最近学外で相手をぼこぼこにしてお金を巻き上げる、なんていったか。そう、倒し屋ってのをやっているうわさだったが、まさか本当だったとはな。しかも能力者とまできてたのか。」

「は?能力者だぁ?」

 聴きなれない言葉に男は聞きかえす。

「なんだ、能力者って単語すら知らないのか。お前が倒し屋として活動しているうわさが流れたのが最近だったから能力者としてはまだペーペーだとは思っていたが、そこまで初心者だったとはな。まあそんなことはどうでもいい。その子達を解放してもらおうか?」

 彼のその言葉に対し、男ははっ、と笑う。

「なに言ってんだ、お前。いきなり出てきやがって。第一お前誰だよ。」

「俺はその子達の担任だ。」

「ふーん、そうか。じゃあ、死ね!」

 そういうと男はいきなり赤羽に向かって電撃を飛ばす。しかしその電撃は空をむなしく飛ぶだけだった。

「なっ。どこだ。どこに消えやがった、あのくそ教師。」

「終わりだ。」

 赤羽はいつの間にか男の後ろに立ち、男の首にどこからか出した剣を立てていた。それは客観的に遠くから見ていた淳にすらわからなった。いきなり消えて男の後ろに移動していたのである。

「えっ?」

 男がそういうか言わないかのうちに慎は男の後ろ首に手刀をうつ。それで男は気絶してしまったようだ。

「い、一瞬……。」

 まさに一瞬だった。赤羽が消えてから男が倒れるまで。本当に1秒かかってなかったかもしれないと思うくらい、早かった。

 そうやって唖然としている淳に対し、赤羽は声をかける。

「大丈夫か。えーっと。うーん。わるい、まだ名前覚えてないや。」

 赤羽は結局ほとんど使わなかった剣を手持ち無沙汰のように軽く振りながら淳に近づいてくる。淳は完全に固まってしまって動かなかった。

「おいおい、大丈夫か?本当にやばいのか?」

 そこで淳ははっとする。

「あ、はい。大丈夫です。でも雄二が。彼がやばいかもしれません。」

「ああ彼か。ふんふん。まあたぶんダイジョブだろうけどとりあえず保健室に運んどくか。」

 赤羽は倒れている雄二を見ながらうんうん、と首を振る。そこで淳は、やっと疑問についてきく。

「あの。あなたは何者なんですか?それにあの力を使う人のことを能力者とか言ってましたけどそれって一体……?」

「ん?なんだ、能力について興味があるの?でも知らないほうがいい。うん、そうだな。あとで記憶を……。」

「で、でも僕も、彼もたぶん能力者って言うやつだと思うんです。」

「ほう、そうなのかい?」

 淳は縦に首を振る。すると赤羽もゆっくり首を縦に振り、答える。

「わかった。でも今日はもう帰ったほうがいい。俺としても、こいつを保健室に届けた後はその男の処分とかいろいろあるからすぐには離せないだろうし。うん。明日の放課後、そうだな。4時くらいに教室に来なさいな。そのころならたぶんほとんどの生徒は帰宅してるから。そのときにゆっくり話そう。」

「は、はい。わかりました。あ、あと、彼も一緒に連れてきてもいいですか。」

 その言葉を聞くと赤羽はうなずき、雄二をしょっって屋上から出て行く。赤羽の影が完全に見えなくなるまで、淳はその様子をボーっと見ていた。