
4
「なるほどな。そんなことがあったのか。」
淳と雄二が小笠原という男に襲われた次の日の登校中に、淳は雄二に昨日あったことをすべて話す。雄二がくるまでのことから雄二がきてからのこと、そして雄二が気絶してからのことを。淳に説明され、雄二は納得いく顔を浮かべる。
「俺が昨日意識を取り戻したとき、いきなり見知らぬ場所でベッドに寝かされてたからびっくりしたぜ。しかもあの担任がいきなり俺を病院に連れてくみたいなことを言うからさらにビックリだぜ。でもそうか・・・。あの担任も特別な力を持ってたのか。」
「うん。赤羽先生が言うには、といっても先生と僕を襲った男の話を聞いてただけだけどね。ともかく先生いわく、僕らみたいに特別な力を持っている人を能力者って言うらしいよ。」
「能力者ねえ。」
雄二はふうんとうなずく。
「それと先生の能力は僕らやあの男とは違って何かを操る能力じゃあないみたいだ。」
淳は昨日あったことを思い出す。赤羽は、男の背後に瞬間移動し、そしてどこからとりだしたのか、剣を手に持っていた。
「どちらにせよ、あの先行は信用してもいいのかねえ?」
考え事をしていた淳に雄二はつぶやく。
「どういうこと?」
「だって考えてもみろ。あの先生が俺たちになんでこの力について説明してくれるんだ?第一どうして俺たちを助けたんだよ。」
「いや、別にそこまで怪しくはないんじゃないかな。僕たちを助けたのはそこまで不思議じゃないと思うよ。雄二だって目の前に襲われてる人がいて、自分がその人を助けることができる力を持ってるなら助けるでしょ?それに僕たちにこの力について教えてくれるのだってただの親切心だと思うよ。第一僕らに危害を与えることが目的なら昨日僕らを助けなければよかっただけじゃないかい?」
「まあそおだけどよお……。うーん。まあ、悩んでもしょうがねえか。」
「そんなことより、雄二。いまさらだけど体のほうは大丈夫なのかい?」
雄二は昨日保健室に連れて行かれた後、病院にも言ったと淳は聞いていた。それなのに一日も休みを取らずに学校に行く雄二を心配していたが、なかなか聞くタイミングか取れずにおり、やっと淳は聞く。
「ああ、楽勝よ。医者にも大丈夫って言われたいな。」
「そっか。それならいいけど。」
今日から早速授業があった。とはいえ、すべての授業でその教科についての説明のガイダンスがあり、短いものでも15分、長いものだと一時間丸まるガイダンスでうめる先生もいた。ただ、今日の授業に数学A1はなく、赤羽と顔をあわしたのは朝と帰りのホームルームの時間だけであった。そして淳と雄二は適当に校内施設めぐりをして時間をつぶし、4時になるのを待った。ちなみに6間目の授業が終わったのが15時で帰りのホームルームが終わったのが15時10分。今日は放課後の掃除(掃除は班によってどこを掃除するか、それとも掃除をしないお休みの週なのか決まっている。その班は名前順で決まっており一週間で次の掃除場所、またはお休みの週に変わるシステムである。明日の掃除は淳が教室掃除、雄二が掃除が休みである。)もなく45分ほどぶらぶらし、そして15時55分ごろには教室の自分の席に座っていた。教室は二人意外誰もおらず、少し広く感じられる。二人が着てから少しして赤羽が入ってくる。
「お、二人とも早いな。俺も5分前にはきたつもりだったが。まあいいか。」
赤羽がこの時間にこの教室を選んだのはわけがある。この教室は図書室とか学生が放課後に利用する施設とも遠いし、職員室からも遠い。そしてこのぐらいの時間帯になれば教室に残ってる生徒もいない。まさに秘密の話をするにはうってつけの時間、場所なのである。それに万一他人に聞かれたのだとしてもマンガの話をしていたといえばうまくごまかせるだろうとも赤羽は考えていた。
「さて、じゃあ授業を始めるか。」
「あの、先生。」
赤羽の出鼻をくじくかのように雄二がいきなり発言をする。
「授業っていう単語を使わないでほしいんですが。なんかかたっくるしいって言うか。やるきがなくなるっていうか。」
「ん?じゃあレクチャーとでも言えばいいのか?」
「いや、だから、えーと。」
適切な言葉が見つからず雄二は悩む。
「そんなことより、谷本。お前、昨日医者に数日は絶対安静って言われてただろ。なのになんで昼休みにはしゃいで走り回ってたんだよ。」
「べ、別に医者も問題ないって言ってたし……。」
「あのなあ。医者も、問題はないかもしれないが、ひょっとしたらってことで絶対安静っていってんだぞ。」
「まあまあ、先生。早くこの力について教えてくれよ。」
赤羽はため息をつく。
「はいはい、わかったよ。じゃあまずはこの力の名前からだな。」
赤羽は自分の右手を教卓の上に出し、そして剣を召喚する。
「うおっ。すげえ。」
昨日、実際に赤羽の能力を見ていなかった雄二は驚嘆する。
「この力は一般的には能力って呼ばれてる。んで、能力を使うやつを能力者ってよんでるわけだな。」
「へえ、なんかある意味そのまんまのネーミングですね。誰がそんな名前にしたんですかね。ネーミングしたやつを見てみたいですね。」
雄二はふざけて言う。が、
「目のまえにいるが。」
「へ?」
雄二は地雷を踏んでしまったようだ。
「能力ってのは俺がなづけた。この力に出会っていろいろ研究し始めたときにな。そのころから俺はたくさんのやつと戦っていて、それで俺がこの力を能力って呼んでたら自然とほかのやつらも能力って言うようになったんだ。で、雄二。俺がこれから話すのはそのネーミングセンスがないやつがそのネーミングをしたときに調べたことだ。お前にはつまらないかもしれないから無理して聞かんでもいいぞ。」
赤羽が雄二をにらみながら皮肉を言う。
「いやっ、別に俺はネーミングが悪いなんて一言も言ってないですよ。むしろシンプル・イズ・ザ・ベストって感じでかっこいいなーって思ったくらいですから。」
「ふーん、そっかー。そうなんだー。」
赤羽は雄二をにらみ続ける。
「なんて、これ以上雄二をいじめてるとかわいそうだしな。さあ、次にいこうか。」
赤羽が雄二をにらむのをやめ、能力について語りだす。
「とりあえずお前らの能力もみしてもらえるか?」
赤羽の言葉に二人はうなずき、淳はバッグからペットボトルを取り出しふたを開け、中から水を出して浮かして見せる。雄二はポケットからライターを取り出し火をつけ、その火をあやつり上を指している自分の右手の人差し指の周りをくるくる回して見せる。
「なるほど。水を操る能力に火を操る能力ね。シンプルでいいな。さて、この力の使い方だが……。まあお前たちも普通に使えるみたいだからわかってると思うが、能力ってのは強く思うことによって発動する。たとえば浅野の水を操る能力だったら『水よ、動けっ。』とか、『水よ、あっちに吹っ飛んでいけっ。』とか見たいな事を念じると能力が使えるわけだな。とはいっても能力ってのは万能じゃないんだがな。まあその辺は後で説明するとして、次は能力を使うときのコストについてだな。能力ってのは無限に使えるわけでも、何のコストもなしに使えるわけでもない。俺が調べた結果わかったのは、能力ってのはどうやら精神エネルギーを使って発動するってことだな。」
「精神エネルギー?」
聴きなれない言葉に淳は疑問を口にする。
「ああ、お前らが能力をはげしく使った後に体は疲れてないのに心は疲れてたり、ものすごいやる気だったのがあんまりやる気がなくなってたりするだろ?俺はそれが精神の疲労だって考えたわけだよ。能力を使えば精神的に疲労する。よって能力は精神エネルギーを消費して使うってな。つまり精神エネルギーってのは、俺が能力について研究してるときに精神や心のエネルギーとか、体力とかをひとまとめにした言葉なんだよ。まあこれも能力と一緒でほかのやつらもこの言葉を使うようになったけどな。」
「へえ、赤羽先生って能力の研究の第一人者なんですか?」
淳はとても、雄二は少しだけ赤羽に感心する。
「いや、そういうわけじゃないんだよ。能力ってのは昔も今ももっと閉鎖的なものなんだよ。ほら、こんな力を持ってるって他人に知られるとやっかみとかいろいろあって大変だろ?だから能力者ってのはたいてい能力を人に隠す。そして俺みたいに研究こそすれ、その研究について深く考えたりはしないわけよ。たとえばさっきの精神エネルギーだって普通の能力者ならそんな名前つけないで、ただ能力を使うと精神的に疲労するなーって思うぐらいよ。んで、たまたま能力とかわかりやすい名前をつけたり、俺がほかの能力者とかかわる機会が多かっとりするから俺の言葉が残っただけ。」
そう一気に話し、赤羽は教卓の上に自分で置いたペットボトルに入ったジュースを飲む。
「さて、ここまでで質問がなければ次のレクチャーに入ろうか。」
「うえっ。」
赤羽のレクチャーという言葉に雄二はもらす。だが赤羽は無視して話を続ける。
「次に説明するのは能力の限定条件ってやつだな。」
またも聴きなれない言葉が出てきたので淳は質問する。
「あの、限定条件って何ですか?」
「ああ、それをこれから説明するんだ。まあこれも俺がつけた名前だけどな。限定条件ってのはその名のとおり、能力を限定してしまう特別な条件がある、っていうかその条件化でしか能力が使えないから限定されるって感じかな。」
「能力を使うことを限定される?」
淳にとってあまり見に覚えのないことなので聞き返す。
「ああ。たとえば浅野、お前は水がないとこでは能力が使えないだろ?」
「あ、そっか。」
淳と雄二は納得のいく顔をする。
「まあ、そんなことはある意味当たり前だがな。水がなきゃ水を操れない。ふむ。まあ、これもある種の限定条件だな。」
赤羽は自分で言った言葉に納得する。
「うん、そんなことは当たり前すぎて考えなかった。」
「今の口ぶりからすると限定条件ってやつはもっとほかの条件で限定それるって話なんすね。」
赤羽の口ぶりから雄二は察する。
「ああ、そうなんだ。さっきいった淳が能力を使うのに水がいっていったが俺が言いたかった限定条件はそんなんじゃないんだ。いや、今さっき気づいたがそれも限定条件だがな。だが、そうじゃなくてだな。限定条件ってのはもっと複雑……。うーん、まあ複雑じゃないんだけど込み入ってるというかなんと言うか・・・。」
どうでもいいところで赤羽は言葉を選び悩んでしまう。そんな赤羽に雄二は言葉を投げかける。
「そんなことはいいんすよ、先生。んで、限定条件てのはいったいなんなんすか?」
「あ、ああ。つまり限定条件ってのはもっとこう違った意味合いなんだよ。ただ、こればっかりは例を出さないとわかってもらえないと思う。ただ単にある条件化でしか能力が使えないってのじゃあわかりにくいだろ?」
そこで赤羽はずっと教卓の下においてあった左手を教卓の上に出す。そこにはひとつの漫画本を開いた状態で持っている赤羽の左手があった。
「え?これって。」
「なんじゃこりゃ?」
淳と雄二は意味がわからず驚く。
「これについて説明する前に俺の能力について説明しなきゃならないな。いっとくけどお前らを信用して話すんだから他言無用だぞ。」
赤羽が二人をキッとにらむ。淳と雄二は思わずつばを飲み込む。
「俺の能力は『マスター・オブ・コミック』。マンガ内の武器、能力、もしくは技を使うことができる。」
「うをっ。それめちゃくちゃ強いじゃないっすか。」
雄二はビックリして思わず声を上げる。
「最後まで話しを聞けよ。ただしこの能力には限定条件がいくつかある。まず、手にマンガを持っていなければならないことだ。しかもマンガといっても実際に使う技等がのってるマンガをその技等が使われてるページを開いて持ってる必要がある。そして一つ持ってて一つのひとつの武器、能力、ないしは技しか使うことができない。ただしある能力、または技を使うのにある武器、能力、技を使う必要がある場合はこの条件を無視して使うことができる。といっても実際に使えてるのはひとつの能力とか技だけなんだけどな。」
「どっちにしろ強いじゃないですか。」
「いや、そうでもない。というか話を最後まで聞け。マンガを一つ持ってればひとつといったが、ひとつの手にはマンガひとつしかもてない。というより二つ以上持ってると駄目なんだよ。だから実際は二つまでだし、二つ使うためには両手がふさがれる。んな状態じゃあ戦えないんだよ。しかも極めつけは俺の能力、めちゃくちゃ燃費が悪いんだよ。」
「燃費が悪い?」
淳が質問する。
「ああ、そうだよ。お前らの能力はただ、操った分精神エネルギーを消費するだけだろ。でも俺の能力は違うんだよ。おれのは[(マスター・オブ・コミック分)+(そのマンガで使われる体力、および精神力)+(俺の印象点)]で普通の能力以上にエネルギーを食うんだよ。ちなみに印象点ってのはそのマンガで実際に消費されるエネルギーが能力につりあってなく、エネルギー消費が能力の割りに少ない、とかそういう俺の考えがあるとするだろ。そうするとその分、さらに精神エネルギーが持っていかれるんだよ。ちなみにエネルギー消費が多いって考えは無視される。悲しいな。」
淳は納得言ったようで2、3度うなずく。
「つまり赤羽先生の能力で言うと限定条件というのは、手にマンガを使いたい武器、能力、技があるページを開いて持ってるという条件なんですね。」
「あと、ひとつの手の内にひとつのマンガまで、ってのと余分に食う精神エネルギー分だな。」
「え、余分な精神エネルギー分も限定条件に入るんですか?」
淳はきょとんとした顔で聞いてしまう。
「ああ。だって俺の能力はあくまで『マスター・オブ・コミック』であってつまり本来の精神力消費はそれだけのはずだろ。が、俺のは余分に持っていかれる。それを俺は限定条件のうちの一つに分類したんよ。」
「能力に関するデメリットを限定条件という項目にくくったということですか?」
「まあ、その能力の必要とする本来の精神エネルギー消費以外のデメリットは大体限定条件に入るかな。」
赤羽は一息つき、そして続ける。
「さて次に進もうか。能力ってのは大体一人ひとつだ。そしてその能力は人によって違う。たとえば浅野のように水に関する能力でも、気象を操るやつとか、水を体内に取り込み発射したりするやつとか、同じ水を操るでも自分で水を召喚してそれだけを操るとか。その場にある水を操るっていうふうに完全に同じに見える能力でも消費する精神エネルギーがまったく違ってたり限定条件がついてたりな。つまり能力の効果、限定条件、消費する精神エネルギーとかすべての要素がまったく同じ能力ってのは存在しないんだ。だから多少は能力でも強さが違う。」
「多少?多少ってのは何すか?」
これまで発言を我慢していた雄二ももういいだろうと思い口を挟む。
「大体能力ってのは能力の効果、限定条件、消費する精神エネルギーの要素すべてを考えるとそこまで優劣は変わらないんだ。まあ同じ人間だし使える能力に優劣なんてそこまでつくもんじゃない。後はどれだけきたえるか、そして思いの力がどれだけかって話だな。」
「鍛える?思いの力?」
淳と雄二は疑問を抱き、雄二は疑問を投げかける。
「ああ、それについては後程な。で、今は能力ってのは普通一人一個でみんな違うって言っただろう?」
雄二は納得いかないのかそんな顔をしながら聞いている。
「だが、ひとつの能力をアシストするような能力ってのはよくあるんだ。これはあくまで自分の持ってる能力のアシストってのだから俺はそれを別の能力とわけずに付加能力って呼んでる。」
「付加能力ですか。」
「ああ。俺は持ってないが俺の知ってるのだとそうだな。自分の血がついたものを操る能力者がいるんだが、そいつは体の好きなところから一切体に傷をつけずに血を出す付加能力を持ってるやつがいる。」
「な、何すかその能力は。」
淳と雄二は今日一番のビックリした顔をする。
「ああ。俺の一番戦いたくない能力者の能力だ。ちなみに血の着いたものだからか血自身も操れる。」
「うげっ。」
雄二は思わずへんなことを言う。
「はい。じゃあさっき言ってた鍛えるとか思いの力とかの話をしようか。」
赤羽は続ける。
「まずは思いの力からだな。さっき能力は強く思うことで精神エネルギーを消費し発動するっていいったよな。じゃあさらに強く思えばどうなると思う?」
「え?そりゃあ。うーん、どうなるんだ?」
(ひょっとして。)
雄二が悩んでいる横で淳は答えにたどり着く。
「ひょっとしてその分多く精神エネルギーを消費して強い能力を使える、ということですか?」
「ああそうだ。」
雄二は淳の言葉に大きくうなずく。
「なるほど。淳、冴えてるなあ。」
「わかりやすくいえば物を投げるとき思いっきり全力でやったほうが強く飛び、そして体力消費が大きくなるのと一緒だ。能力ってのは強く思えば強く思うほど強くなる。そして消費する精神エネルギーも多くなるってことだ。だから思いの力が大きいほうが強くなる。強く思うことがあればその分精神エネルギーも多くなるしな。」
「そうなんすか?」
「ああ。お前たちだって受験勉強のときなんか体の調子とかは一緒でもマンガとかドラマに影響されてたり先生のいい言葉を聴いたときなんかみたいに思いが強いときのほうが普通のときより長く勉強できただろ?それと一緒だよ。」
淳はうなずく。が、雄二はうなずかない。
「んー、どういうことだ?」
「だからね、雄二。もし雄二が勉強やってても、もてなかったら一日にそんなに長い時間できないでしょ?」
「そりゃそうだ。」
「雄二は勉強やればもてるって思ってた。そしてもてたいって強く思ってる雄二は一日にたくさん勉強できたわけだよね。つまりもてたいって思いが普通はそんなにいっぱいできないものをいっぱいできるようにしたんだ。能力でも同じでさ。そんな風に強く思えるとその分いっぱいがんばれるんだよ。」
「な、なるほど。」
うんうんと雄二はうなずく。
「ずいぶん面白いたとえだな。」
赤羽は頬づえをつきながら二人を見ていたが淳のあまりの変なたとえに納得する雄二を不思議に思っていた。
「まあいいや。次いくぞ。」
「次は能力を鍛えるってことだな。能力ってのは使えば使うほど強くなる。そして強い思いを持って使うほど強くなる。使わんとどんどんなまってく。筋肉とかと一緒だな。ちなみに強くなるってのは精神エネルギーは一定でも能力の威力が上がったり、同じ威力を出すのにかかる精神エネルギーが減ったりとかだな。能力を操る精度ってのは武術なんかと同じでうまく操る練習が必要だな。まあ、鍛えるってのはそんなとこかな。」
そして赤羽はうなずく。
「うん。能力に関して教えとくのはこんなとこかな。後はその能力を生かすも殺すも使わないもお前ら次第。あ、ちなみに悪用したら俺が行くから。もちろんひっぱたきに。」
赤羽は笑顔で言う。その笑顔が怖い。
「先生。ありがとうございました。」
「勉強になったっす。」
「ん。じゃ、きをつけて帰れよ。」
赤羽が手を振りながら二人を見送る。廊下に出たあたりで二人はさようなら、と礼をして帰る。そんな二人に赤羽もさようなら、と礼を返すのだった。
夕日のきれいな夕暮れ時。広い部屋に二人の男がいた。大きい窓から夕日が差してくる。あたりには見るからに高そうな絵やつぼが置いてある。また、しいてあるじゅうたんも部屋の中央にある机も、そこに並んで置かれたいすも非常に高価なもののようだった。一目でこの建物の所有者がお金持ちだとわかる内装の部屋だ。
「へっ、それでこいつらが今回のターゲットかい?」
柄の悪そうな男が、品がよくまるで貴族のような男に問いかける。
「ああそうだ。しかしターゲットなどというな。あくまで彼らを仲間に取り入れることが優先だ。彼らを痛めつけるのはわれわれの仲間に入らず、さらにわれらに敵意を抱いたと判断したときのみだ。」
邪悪な笑みを浮かべる男に貴族風の男が忠告する。
「お前の勧誘のほとんどが戦闘になっている。さらにお前はあまり仲間にできていないからな。今度は失敗するなよ。」
「わかってるって。」
男はまるで聞いてないような雰囲気で適当に返事をするだけだ。
「それと彼らのそばにあの赤い死神がいるそうだ。だから今回は特別に要人を雇った。もし赤い死神との戦闘があってもそれは彼に任せお前は彼らとの交渉に専念しろ。」
その言葉を聞いた男はほくそ笑むのだった。
「へえ。赤い死神が。」
そうして男はその部屋を出て行く。残った貴族風の男がため息混じりにつぶやく。
「ふう。あいつを誘ったのは失敗だったな。もし次も同じようならあいつを見限らなければならんな。」
そうして男はいすに座り、テーブルの上においてあるこれまた高級そうなカップを口につける。
「赤い死神。いつか敵になると思っていたが。私も覚悟を決めんといけんな。」