E−XAMY

   7

『なんだったんだろうな、あいつ。』

 雄二が電話越しに話しかけてくる。

 あの後、淳たちは赤羽にいろいろ聞こうと思ったが、「もう少し待ってくれ。いろいろ調べなきゃいけないから。」と、赤羽は言って消えてしまった。

だから淳たちも家に帰ることにしたのだ。

 しかし、お互いかなり傷が痛み、言葉を交わさずにいえについてしまっていた。

なので、家でゆっくりして痛みがようやく少し引いてきたところに雄二が淳に電話して、今日の出来事について話し合っているのだ。

「江田とか言ってたよね。あ、あと先生が戦ってたあの人も。」

『それだけじゃないぜ。今日あったあの学校に乗り込んできたやつらも。あー、もう。意味わかんねぇ。』

 情報量が絶対的に足らない彼らには、今日起きたことの背景がさっぱりわからなかった。

『ちっ、しかたねぇ。明日あの先行にいろいろ聞いてみるしかねえな。』

「うん、そうだね。それしかないかな。とりあえず今日はもう寝るよ。」

『ああ。もうこんな時間だもんな。じゃあ、おやすみな。』

「お休み。」

 雄二との話を終えると淳は眠りにつくのだった。

 

 

 そして次の日。

 学校では赤羽の様子は昨日までとほとんど変わらなかった。

 淳たちもみんながいるときは赤羽に昨日のことは聞くつもりはなく、放課後まで待つつもりだった。

「ちょっと。あなたたちちゃんと掃除しなさいよ。」

 今日のホームルームで学級委員長に決まった女の子が掃除をしない男子たちに言う。

長髪で目がきりっとした、凛としている少女である。

 今は授業が終わり、ショートホームルーム(一日の授業が始まる前と終わった後にこの学校はショートホームルームを行っている)

「はいはーい。ちゃんとやってますよー。」

 だが、言われた男子たちはちっともやろうとしない。

「浅野君も何かいってやってくれない?」

 男子の中で一人まじめに掃除をしていた淳に、少女は言う。

「え?えーと、うーん。」

「はぁ。だめだこりゃ。」

 少女があきらめた瞬間、掃除をしていなかった男子たちに何かが飛んでいく。

「いてっ。」

「あたっ。」

「お前ら掃除はちゃんとやれよ。みんなでしっかりやれば10分で終わんだろ。」

 教卓の前で掃除を手伝っていた赤羽が何かを投げたようだ。

「先生がそんなことしていいのかよ。」

「そーだ、そーだ。」

 男子たちは文句をたれる。

 が、

「あ?」

「「!!」」

 赤羽が思い切り彼らをにらむと蛇の前のカエルのように身を震わせる。

「掃除をちゃんとしないやつらにはそんなことを言う資格はないよ。」

 言われた男子たちは黙々と掃除をしはじめる。

「かっこいい。」

 少女がうっとりと赤羽にみとれる。

「やっぱり赤羽先生はかっこいいわ。」

 淳は掃除を続けていると、床にチョークが落ちていることに気づく。落ちている場所から考えるにどうやら赤羽は先ほどこれを投げたようだ。

 

 

 掃除も終わり、生徒たちがみな下校した後の教室はとても静かだった。

 そこに三人の男がいた。

「じゃあ、話したくださいよ、先生。」

 淳たちは昨日のことを放課後に赤羽に話してもらう約束をしていたのだ。

「わかった。といってもあらかじめ言っておくが、これはあくまで俺が調べたことだから絶対的に正しいかどうかはわからないってことを覚えておけよ。」

「わかりました。」

 淳と雄二はうなずく。

「じゃあ、まずは昨日の学校のっとり事件からかな。あれは俺たちがいたからそこまで大事にならなくてすんだが……。」

「いやいや、十分大事でしたよ。」

「まあそうだな。だけど誰もけが人が出なくてよかったよ。」

 赤羽はうんうんとうなずく。

「俺が調べた結果、あいつらは宗教集団だってことがわかった。」

「宗教集団ですか?」

「ああ。何でも『弱肉強食。どんな分野であろうと強ければ正義。それが自然の摂理。』とか考えてるやつららしくてな。そいつらのトップや会員たちの多くが国につかまってたんだよ。それでそいつらを解放するために学校をのっとったらしい。」

「なんすか、そりゃ。」

「俺が知るかよ。とにかくそんな馬鹿共のおこした事件だったらしい。」

「ふーん、そうだったんすか。」

「ちなみにこれは今日当たりにニュースで流れるとおもうぞ。」

「昨日もこの事件ですごいニュースになってたらしいですね。」

「ああ、すごかったらしいぜ。お袋がニュース見てものすごい驚いてたからな。」

「まあ、やったことがめちゃくちゃ大きかったしな。んで次にお前らがおそわれた事件だ。」

 

 

 赤羽はつづける。

「あれはあるグループがお前らを勧誘しようとしていたらしい。」

「あるグループ?」

「勧誘すか?」

 淳と雄二は首をかしげる。

「ああそうだ。お前らが最近能力者として目覚めたのを知って仲間に引き入れようとしていたらしい。」

「で、でも僕たちいきなり襲われたんですよ。」

「ああ。それはお前たちに勧誘しに来たやつが人を痛めつけるのが趣味の最低なやつで、そのグループにも人を痛めつけるために入っているやつだったかららしい。」

「人を痛めつけるために…。そんなグループなんですか?」

 淳は青ざめた顔で赤羽に問う。

「いや、グループの考えは『能力を使って世の中を平和にする。』とかいうものらしい。だが、平気で人を痛めつけるやつを仲間にしているんだ。やはりいい悪いで言ったら悪いグループだな。だがこれでこの組織はお前たちをマークしただろうな。」

 純は不安そうな顔になってしまう。

「そんな。僕たちはただ襲われただけなのに。」

「あーんしんしろって。なんかおきたら俺がズバッと解決してやるからよ。」

「いや、谷本。下手なことはしないほうがいい。確かにむこうさんは組織化している以上、組織という強さを見せてくるだろう。だがお前らには俺がいるからな。そうやすやすとは襲ってこないさ。だから帰り道とかになるべく注意して、やばくなったらすぐ逃げる&俺に報告してくれれば何とかなるはずだ。」

 赤羽の意見に対し、雄二は前から疑問に思ってたことを聞いてみることにする。

「そりゃありがたいっすけど…。俺たちに何でそこまでやってくれるんですか。第一、相手が組織だってるのに何でそんなに余裕っぽく振舞えるんすか?」

「おいおい。余裕ぶってるのはお前も同じだろ。」

「いや、俺のはなんと言うか性格とかじゃないっすか。でもあんたのは……。」

「あなた、だ。」

 雄二のあまりにも失礼な言い方に赤羽は訂正を加える。

「あなたのはなんか性格って感じがしないんですよ。」

 うーん、と赤羽は思い悩みそしてゆっくりと発言する。

「そうだな。確かに俺は正体不明の敵に余裕ぶれるような性格じゃあないな。」

「でしょ。なのになんで余裕ぶれるんですか。ってか一つ目の質問に答えてくださいよ。」

「まあまて。物事は順番だ。まず俺は別に余裕ぶってるわけじゃあないぞ。お前たちから見れば余裕ぶってるように見えるかもしれないが。だが別に慌てふためいていないのも確かだな。まあこれは相手さんの組織がそこまで強くないように見受けられたからかな。お前たちが戦った、えーとなんだっけ、名前。とにかくあいつは確かにほどほど強いが所詮その程度でしかない。あんなやつが所属している組織ならそこまで強くないとおもったからだ。」

「あ、あれで強くないっていえるんですか。」

 淳は驚いてしまう。

 自分たちが二人がかりで、相手が余裕をこいていたから勝てたような相手が強くないなんていわれれば驚くのも当たり前かもしれないが。

「そんなに驚くことはないさ。あいつは何でも初心者狩りとかそんなところしくてさ。能力者として日の浅いやつらに対してばっかけんか売るような弱いやつなんだよ。お前たちも経験を少しつめばあいつがそこまで強くないってわかるさ。」

 と赤羽は言っているが江田はそこまで弱い能力者ではない。

 

 

「その話はこれでいいとして、次になんで俺たちにいろいろしてくれんのか説明してくださいよ。」

 雄二はかねてからの質問をする。

「うーん、深い理由は特にないぞ。最初にお前たちを助けたのだって相手が一方的に悪いって知ってたからだし、能力について説明したのだってお前たちに聞かれたり、能力を変な風に我流に身に着けて制御不能にさせないようにしたためだしな。」

「本当にそれだけなんすか?」

 雄二は赤羽に疑いの眼をぶつける。

「まあそれぐらいだな。べつに人を助けるのに理由なんていらんだろ。」

「たしかにそうっすね。うたがったりしてわるかったっす。」

 そういうと雄二はにかっとわらう。

「ま、そんなとこかな。なんかほかに聞きたいこととかあれば何でもきいていいぞ。」

 それなら、ということで淳は質問する。

 

 

「あの黒いコートの人は誰だったんですか?先生と悪い意味で知り合いのように見えましたけど。」

 赤羽はちっ、と舌打ちをし、いやそうな顔で語り始める。

「あいつは俺が能力を使うようななってすぐにあった能力者でさ。何度も俺と戦ったことがあんのよ。んで、それがいつもぎりぎりの戦いでそれも命がけだからな。いやになっちまうぜ。名前は國生響字。性格は冷静で非情なバトルマニアだ。強いやつと戦うことだけが生きがいみたいでほかの事なんかどうでもいいような感じだな。弱いやつで素質がないやつがあいつの前に立つと完全に無視か殺すかどっちかだけだ。ほんとにやーな性格だぜ。能力は、この間いった血のついたものを操る能力だ。名前は知らん。黒き闇医者っていう二つ名があって、それぐらいほかのやつらからも恐れられてる。お前たちもマークされたっぽいから気おつけとけよ。」

「気、気おつけるっていったってよ。」

「う、うん。そうだよね。気お付け用もないような気がする。あれ?そういえばこの人も組織の人なんですよね?じゃあやっぱりあの組織はそんなに弱い組織じゃあないんじゃあないですか?」

 淳の質問に赤羽は首を振って否定する。

「いや、やつは組織の人間じゃあないと思うぞ。あいつは前から始末屋をやっていたからな。今回も組織に雇われただけだろう。」

「始末屋ですか?」

「ああ。気に入らないやつを始末することを仕事にしてる最悪なやつのことだ。まあ國生の場合は相手が強くて楽しめる場合でないと仕事を引き受けてないらしいがな。今回は俺がいるってことで引き受けたんだろう。まあ、あいつを雇うにはかなりの金が必要だからな。もうあいつが出てくることはないと思うぞ。」

「仕事を選ぶくせにお金もたくさんふんだくるんすか。」

「それだけでなく、性格もよくないからな。だがそれでもやつは強いからな。ともかく、今日はこんなとこかな。ほかに何かわかり次第お前らにこうやって話してやるから今日は帰んなさいな。」

 赤羽との話が終わり、淳たちは赤羽に礼を言って帰る支度を始める。

「さっきも言ったがくれぐれも気おつけてな。たぶん俺を無視してお前らを襲ってくることはないと思うが念には念を入れてな。」

 

 

 二人の男が二枚の写真を見ながら大通りを歩いている。

 一人は中肉中背の目つきが悪いサングラスをかけた男。

 この男はうすい紫色のスーツに赤いネクタイをしている。

 ホストのような服装だ。

 もう一人は目が細く、大柄で筋肉がたくましい男だ。

 上はタンクトップ一枚に下はジーパンという服装だ。

「へえ。これが今回のターゲットかい。ずいぶん弱っちそうじゃん。」

 めがねの男がニヤニヤ写真を見ながらつぶやくと大柄な男が反論する。

「こら。見た目で判断するなってわれらが盟主にも言われてるでしょ。それにそいつらは江田を倒したって能力者なのよ。少なくとも弱いってことはないんじゃなくて?」

「はっ。なにいってんだ。お前だって知ってんだろ?江田のヤローは相手が弱いとなめ腐って戦うやつなんだよ。どうせ今回も相手をなめてかかってその隙を突かれただけだろ。第一、俺はあいつが大っ嫌いなんだよ。人を痛めつけて喜ぶようなヤローじゃねえか。やられてせいせいしたぜ。」

「確かにそうかもしれないけど、でもやっぱりなめちゃだめよ。あの赤い死神が近くにいるって話もあるし。」

「わかってるよ。なるべく赤い死神とはかかわらないようにするって。やつと戦えるのはわれらが盟主くらいだからな。」

「ええ。気を引き締めていきましょう。すべては平和のために。」

「ああ。われらの盟主による平和のために。」