E−XAMY

   9

「大丈夫か?」

 しばらくして赤羽が倒れている淳たちに向かって声をかける。

「悪かったな。どうやら敵さんはお前たちを完全に攻撃対象と認めているようだ。俺がいるから俺のほうに来ると思っていたが大間違いだった。本当に悪かったな。」

 言うと赤羽は頭を下げる。しかし淳はむしろ赤羽が助けてくれて本当によかったと思っていた。だから彼の謝罪はむしろおかしいと思っていた。

「い、いえ。そんな。謝ることじゃあありませんよ。むしろ僕たちのほうこそ助けてくださってありがとうございました。でもどうして助けにこれたのですか?」

 敵がいなくなったことで淳はゆっくりとだが冷静になってきた。そしてふと疑問に思ったのだ。どうして彼がここに着たのか。

「ああ。別にたいしたことじゃあない。あいつらが俺のほうに向かってくるだろうとは思っていたが、万が一のために仕事を早く終わらせてお前たちを守ろうって思ってたんだ。1,2週間ほどむこうから何もなければやめるつもりだったが、まさか初日から襲われるとな。」

 赤羽は表情を一気に引き締めて続ける。

「だがこれでお前たちにも敵の攻撃が確実に来るってことがわかった。だからこそお前たちに聞こう。お前たちはどうしたい?ことが終わるまで俺に守られるか、それとも自分たちでもたたかうか。」

「たた、かう?」

 赤羽の問いに淳は黙り込んでしまう。いきなりそんなことを言われても困ってしまう。淳は今まで普通の生活しかしていなかった。喧嘩すらしたことがなかった。それをいきなり戦うなんていわれても困ってしまう。

 だが一方でわかっていた。自分で戦わなければならないことを。赤羽に守ってもらうというのもいいものだが、それでは駄目なのだ。赤羽がいないときはどうするのか。彼にずっとついていかなければならないのか。ことが終わるのはいつになるのか。

 やはり自分でけりをつけなければならない。たとえいきなり巻き込まれてしまっただけであっても。もうこれは淳の戦いでもあってしまっているのだから。

 ……しかし淳は即答できなかった。

 やはりまだ今の彼ではすぐに決断することは無理だった。

「まあ、すぐに答えを出す必要はないさ。っとその前にまずはその傷をどうにかしないとな。じゃないとどちらにせよ危ないからな。ちょっと待ってろ。」

 言うと赤羽はポケットから携帯を取り出して電話をかける。

「ああ、俺だ。ほら、この間はなしてたあの二人。……そうそう、俺の組のあの二人だよ。あいつらがまた襲われちまってな。今度はなんか厄介な組織に狙われてるみたいでさ。それでこいつらの傷を治してほしいんだよ。……えっ?ああ、とりあえずちょっとしたかすり傷とか打ち身くらいだから大丈夫だとは思う。……ああ、悪いな。ありがとう。ああ、とりあえず学校に連れて行くからそこで待っててくれ。ああ、じゃあな。」

 そこで赤羽は電話をきり、淳たちに話しかける。

「たてるか?とりあえず学校にいくぞ。そこで怪我の治療をしよう。その後、今後のことを打ち合わせよう。」

 淳と雄二は赤羽の言葉にうなずきともに学校に向かうのだった。

 

 

 学校に着くと淳たちは自分のクラスに向かった。

 教室の前に立ち、赤羽がドアをあけると中に女性が一人立っていた。淳たちのクラスの副担任で、英語の教師だ。名前は白石春菜。髪はショートカットだが、いつも自信なさげな表情で眉が常に下がっている。

 赤羽は彼女に気づくと彼女に言葉を投げかけるのだった。

「悪いな、わざわざ。」

「いえ。別に気になさらないでください。」

 女性は丁寧な言葉で返す。

「それで、そちらのおふた方ですよね?」

「ああ。たのむ。」

 そして赤羽は淳に怪我した部分を見せるように言う。淳が見せるとその部本に白石の両手が近づき、不思議なぬくもりを感じると見る間に傷がいえていく。

 淳たちは思わず驚いてしまう。

「先生。まさか彼女も。」

「ああ。能力者だ。」

 まさかこんなに身近に能力者が何人もいたなんて淳は知らなかった。

「ひょっとしてまだほかにも能力者っているすか?」

「俺が知ってる中ではこの学校ではあと二人いる。」

 あとふたり。

 淳は予想していなかったことに驚く。まだ能力者が身近に二人もいたのか。

 一方で雄二はそこまで驚いていないようだ。白石が能力者だったと知り、身近に能力者がもっといると予想を立てたからだ。

「これでここの傷は治りました。次のところを見せてください。」

 淳が驚いている間に見せていたところの傷は完全にいえてしまった。

(す、すごい。)

 確かに傷自体はそこまで大きいものではなかったが、全治一週間くらいだったものがこんなに早く直ってしまった。淳は白石に、いや白石の能力に感心してしまった。

「ってか、ちょっとまってくださいよ。先生。こんな能力があんならもっと早く使ってくださいよ。何で今まで使ってくれなかったんすか。」

 確かに雄二の言うとおりだ。こんな能力があるのだったら、なぜ今まで使わなかったのか。入学式の日のあの電気使いにやられた時だって怪我とまではいかないまでも結構ダメージをくらっていた。昨日だって結構ダメージをくらっていた。なのになぜ今回はするのか。

「ああ、まあそのことは悪かったよ。だけど今回は今までと違うんだ。今までは次がなかった。だからゆっくり傷を治す時間があったんだ。だが今回は次がある。次にまた襲ってくるやつらがいる。なるべくダメージを残したくない。だから今回は治療してもらったんだ。第一、治療の能力を知ったら怪我のことなんて考えずに突っ込んで行こうって考えるかも知れないだろ。だが戦いではなるべくそんなことは考えちゃいけないんだ。だから教えなかった。」

 淳は完全には納得できないものの、納得することにした。たしかに能力に頼りすぎてしまってはいけないと淳は思ったからだ。雄二はこの能力を知ってたら突っ込むってところは強く同意したため完全に納得した。

「浅野さんの治療は終わりました。次は谷本さんを治療します。けがをしているところを見せてくださいませんか。」

「あ、はい。」

 白石は淳たちが話している間にもう淳の治療を終わらせていた。

「はやいな。春菜、お前又成長したんじゃないか?」

「そ、そうですか?」

 赤羽の質問に白石は若干ほほを赤めて答える。

 

 

「さて、それじゃあそろそろこれからのことについて話し合おうか。」

 白石が雄二の治療をし始めて少したってから赤羽は言う。

「お前たちにはこれから多かれ少なかれ敵さんの能力者が来るだろう。もちろん目的はお前たちを倒すためだ。だからお前たちはどうしたい?別に俺がずっと守っててやってもいいが。」

「へっ、なに言ってるんすか先生。そんなことしてくんなくて十分すよ。俺は戦う。そして俺が淳のことも守ってやりますよ。」

 そこで淳ははっとする。やはり自分は戦わなくてはいけないのだと。雄二の言葉で淳は決意、とまでは行かなくても心をひとつにする。そう、彼は戦う道を選ぶのだった。

「ううん、大丈夫だよ雄二。先生、僕も戦います。本当は戦いたくなんてないけど。でも僕は守られてばっかれじゃ駄目だと思うんです。僕はこのことの当事者だし、僕には戦う力もある。だから、だから雄二ばっかりに任せるなんてことはできない。」

 赤羽は淳と雄二の返答を意外に思っていた。てっきり彼らは自分に守ってもらう道を行くとてっきり思っていたからだ。特に淳は絶対にその道をいくと思っていた。

 だが二人の目を見て赤羽は少し二人を頼もしく思っていた。

「本当にいいんだな?」

 赤羽はくりかえす。しかしもうこのことに意味はないことを知っていた。

「「はい。」」

 淳たちは強くうなずくのだった。