
幕間
昔から人付き合いが悪かった彼には友達と呼べる人間はそんなにいなかった。だが、それでもたった一人だけ親友と呼べる友達はいた。小さいころからずっと付き合っている友達で、表面上では彼は認めていなかったが、とても仲のいい二人だった。ずっと昔からその友達は彼と一緒にいた。彼にはそれが不思議で仕方がなかった。彼は人付き合いが苦手で、少し人を見下している節もあり、さらに人と交わることを好んでいなかった。そんな自分に対してどうしてその友達は仲良くするのか。その友達の周りにはたくさんの友達がいたのに、どうしていつまでも自分にかまうのか。
中学のころ、ふとしたきっかけで彼はそのことをその友達に聞いたことがあった。そうしたところ、「だって君はなんだかんだ言っていい人じゃん。何でそれを嫌いになるんだ?」と答えられた。彼は理解ができなかったがその友達は「友達ってのは利害でなるもんでも理解とかしなきゃなれないもんでもないだろ」と付け足した。彼はやはり理解はできなかったが、結局彼の言葉に否定するような余地もないし、納得とはいかないまでも反論をそれ以上することはやめにした。
そんなこんなでその後も彼らはずっと仲のいい親友同士だった。彼が口数が少ないこともあり、また人付き合いも苦手なこともあって話し合う数は少なかったかもしれないが、それでもお互いがお互いのことを理解していた。決して裏切ることのない本当の友情がそこにはあった。彼は認めてはいなかったが、彼自身も心のそこではそれをわかっていた。
友達の家は非常に貧乏だった。大学に進学する際、彼は非常に優秀であったが、たとえ奨学金をもらったとしても私立に行くことはできなかった。そして勉強もバイトを続けながらしなければならないくらいだった。
反対に彼の家はものすごい裕福だった。その昔、江戸時代のころ彼の家は比較的大きな武家だったという、由緒正しい家柄であったことにも由来する。
彼は友達にせめて受験勉強のときくらいは自分が多少お金を貸すといった。いままで彼には世話になってきたし、それくらいは当然だと思ったのだ。しかし彼は断った。中学の頃にも言った通り、自分は君と利害のために付き合っているわけではないのだから、と譲らなかった。彼はそれを受け入れ、その代わりに友達に勉強を教えることにした。いくら彼が優秀でも、学校の勉強だけでは受験に対応できないところがあったからだ。
そして彼らはともに学び、国立大学の中でもトップに位置する大学に入ることができた。友達は泣いて喜び、彼に何度もお礼を言った。彼も表情こそ変えなかったが、そのことをとても喜んでいた。
友達の父親は医者だった。そしてとても優しい人であった。いろいろな外国の戦争後の復興にも少なからず参加しており、その国の人たちにも好まれていた。しかし友達が小さいころにテロに巻き込まれて死亡した。友達はそのために戦争を憎み、そして誰よりも平和を愛する人になった。そのこともあり、また友達は元来とても優しい性格であったため、いつも自分がこの世界を平和にしてみせると彼に言っていた。彼もそのことに同意しており、自分たちが大きくなって彼がそれを実行するときには絶対に彼に協力することを心の中で誓っていた。
だが、悲劇は訪れた。
友達がひき逃げに会ったのだ。友達が担ぎ込まれた病院に彼が行ったときには、もうすでに友達は虫ほどの息しかしていなかった。そして彼に気づくとにっこり笑っていった。
「いままで世話になったのに、ごめんな」
彼はわけがわからなかった。世話になったのは自分ではないか。だからそんなことを言うのはおかしい。それに将来はどうするのだ。せっかく自分の第一志望の大学にも受かり、これから夢に向かって大きな一歩を踏み出そうというときに。そうだ。だからそんなのは間違っている。間違っているんだ。こんな、ことは……。
そして友達は最後の言葉を残した。
「お前になら頼める。いや、お前にだから頼める。この世界を、平和、に、して……」
心音を知らせていた機械が突然今までになっていた音と違った機械音を発した。まるで友達の心臓はもう止まっていると、彼に教えるかのように。いや、そうではない。本当に友達の心臓は止まってしまったのだ。その言葉を残して。
彼はこのとき心に誓った。自分がこの世界を平和に導くと。たとえどんなことをしてでも。たとえ自分が、どんな道を歩むことになろうとも。
そして彼は兵を集めた。自分の考えに同調してくれるものを。平和を心から望んでいるものを。そして彼は突き進む。修羅の道を。どんなことが待ち受けていたとしても。
そう、かれは最強の能力者とも言われた人物だ。後に気高き純白と呼ばれ、多くの能力者に恐れられる存在となったものである。
「安心して見ていろ。わたしが作り上げて見せる。お前に代わって。争いのない、平和な世界というものを」
彼は歩み続ける。自分の信じたその道を。友と誓った、その約束を。その足を決して緩めることもなく。