E−XAMY

2―2

「わるい、今日は大事な本買わなきゃいいけないんだ」

 雄二がそのように言ったため、淳は修行のあと一人で帰ることにした。本の内容は言っていなかったが、「後でお前にも貸してやるよ」とニヤニヤしながら雄二は言っていたため、淳には予想がついた。

 そして帰り道。いつもと変わらぬ道をやはりいつもと変わらず歩いていると突然、「久しぶりだな」と後ろから声をかけられた。声を聞いたときは誰だかわからなかったが、振り向きその姿を見た瞬間、淳は体を強張らせた。そこにいたのは、淳たちが白藤たちと戦う原因を作り出した男だったからだ。そう、江田である。赤羽が言うには、彼は今、白藤のグループからは抜け出したらしいが、それならばなぜ、淳の目の前に姿を現したのか。

「お前、あの白藤を倒したらしいな?」

 江田は以前使えていた主に対して、何の忠義心も持っていなかったかのように呼び捨ててその言葉を放った。

「どうして、貴方が?」

「あ? 決まってるだろ。あの白藤を倒した男に俺が勝てば、実質的には俺が白藤に勝ったことと同じになるわけよ。つまりはお前は俺が名を上げるための生贄よ」

淳はその言葉を聞いて驚き、そして憤りをあらわにして「名を上げる? そんなことのために、貴方は……」といったが、江田は「はっ。そんならお前は黙って俺にやられてろ」と一蹴した後、地面を思い切り踏み込み、かなりの速度で淳に向かってきた。そして淳に向かって大降りで殴りかかる。

しかし淳はこの攻撃を冷静に見切ることができ、いとも簡単によけきった。

「よけられちまった、か!」

 今度は逆の手で淳に向かって攻撃してくる。しかしこれも淳はやすやすと見切って、よける。

(なんだろう、これは。この感覚は。あの人の攻撃が、とてもゆっくりに見える)

 江田は何度も何度も淳に殴りかかるが、そのどれもがかすりもしなかった。

「この、くそがぁ!」

 自身の攻撃があまりにもあたらないため、江田は相当ストレスがたまっていた。そしてその鬱憤を吐き出すかのように大振りでけりを放つ。淳はこれも大きくバックステップを踏むことでよける。

「雑魚のくせによお!」

 江田はよけられるとすぐに追撃に入ったか、淳はそれらをよけながらかばんに入ったペットボトルを取り出し、ふたを開けた。そして中の水を操り、勢いよく、江田の腹をめがけて飛ばした。

「そんな攻撃! 俺の能力の前では無駄なん……」

 だがしかし、水が江田の腹に当たった瞬間彼は大きく後ろに吹き飛び、倒れこんだ。そして江田は「うう」とうなった後、気を失った。

 

 

「え?」

 しかしその場面に一番驚いたのは、今はもう気絶している江田ではなく、淳自身だった。確かに思い切り水を飛ばしたが、江田の能力である威力の増減により、かなり弱められたはずだ。以前はそうだったのだから、間違いはないはず……。それなのにもかかわらず、江田を一撃で倒してしまった。まさか江田は能力を発動しなかったのか。いや、間違いなくしたはずだ。もししていなかったのならば、いくら体格のいい江田でも、もっと吹き飛ぶはずである。江田は能力を使っていた。それは間違いがない。なのになぜ、決して弱くはないはずの江田を一撃でKОしてしまったのか。できてしまったのか。淳はすこし考え、そしてひとつの答えに達する。

「まさか、僕、強くなってる?」

 倒れた江田のすぐそばでたたずむ淳は、そうつぶやく。そして彼の心には、江田を思い切り攻撃してしまったことの罪悪感と、自信が強くなっていると実感できたことによる驚きとが半分ずつ占めていた。