E−XAMY

   2―3

「江田に襲われた?」

 いつものように修行場で修行をする少し前に、淳は昨日あったことを説明した。

「それで、お前大丈夫だったのか」

「あ、はい。僕は大丈夫だったんですが、後からよく考えたら、やりすぎちゃったなと思って、手当てができるような道具を持って江田さんがいた場所にいったんですよ。でもそのときはもういなくて……」

「いや、まあ、そうか」

 淳のそのセリフに唖然とした気持ちを半分こめてそう答えた。

「ってかすげえな、お前。まさかあのおっさんを一人で倒しちゃったのかよ」

「う、うん。そう、なんだね」

「っかー、まじかよ。結構へこむぜ」

「え、でも雄二も僕より強いじゃない」

「あん? そんなことはねえだろ。あーあ。どっこいどっこいの実力かと思ってたけど、リードを許しちゃってたのかあ」

「いや、そんなことはないぞ。今のお前たち二人は両方ともおんなじくらいの実力だ」

「えー、ホントッすか?」

「ああ、そうだ。だから淳も浮かれるなよ」

「いえ、浮かれてなんかいませんよ」

 淳は少しあわてて答える。しかし慎はクスリと笑いながら「江田を倒したって言ってたときは少し自慢げだったぞ」といった。

「ともかくだ。これでわかっただろ。お前たちは強くなってる。それもかなりな。だからその強さに誇りをもて。そしてそれ以上に、正しい心を持て。どんなに強い力も、正しい心がなくばただの暴力なんだからな」

「もう、その話はいいっすよ。みみたこです」

「でも、雄二。慎先生の言うとおり、それはとっても大切なことだと思うよ」

「わかってるって、それくらい」

「っさ、話はこれくらいにして、今日の特訓をはじめるぞ」

 そしてその日の特訓が始まった。

 

 

「ソレデ、コイツを倒せばいいんデスネ?」

 暗いバーのような場所に中国の人間だろう男が写真を見ながら、顔を隠している男と話をしていた。

「ああそうだ。というより、殺せよ」

 男のその言葉に中国人のような男性ははっ、と軽く笑って「分かってますヨ、それクらイ。でもこんなやつコロシて、意味がアルンデスカ? こんなドこにデもいそうな人間」とかえしたが、男はなんだ、と肩をすくめて「しらないのか、その男を」とさも中国風の男が写真に写った一人の男のことを知らないことが不思議であるかのように言った。

「エエ、こんなやつ知リませんヨ。そもそも私が知っていル日本人なんて、全然イませんしネ」

「それでも名前くらいは聞いたことがあると思うぞ」

「フーン、そんなに有名人なんですカ」

「そもそも、ただの一般人を殺すのに、君に頼むとでも思ったのか?」

「アア、それはそうデすね。ソレデ、だれなんです、ソノ男」

「赤羽慎だ」

「アカバ、どこかで聞いたことのアルヨウナ、ないよウナ」

「赤い死神、レッドデスとでも言えば分かるか?」

「アア。アア、アア。赤い死神デスカ。シってますよ。能力者ガカなりイる日本デモ、最高峰に位置する能力者の一人だとカ」

「そうだ。彼を殺してほしい」

「ベツに構いませんガ、確カ彼、正義の味方っぽいことばかりしテて、人に恨まれるようなことはそんなにシていない……、ア、ソウカ。だからカ。貴方タチ、つまり悪者ですカ。よクよク考えてみれば、ワタシに殺す依頼を出してる時点で、分かるようなもんでしたネ」

 中国風の男は何かが笑いつぼに入ったのか、ケタケタとわらいだした。しかしもう一人の男は表情を崩さず、「ともかく、頼めるな」と言うのみだった。

「いいデスヨ。でも何でワザワザ高い金払ってまで、彼を始末したいんデス?」

「彼には仲間が世話になってな」

「セワ、ですカ?」

「ああ。仲間が同胞を解放するためにテロを起こしたらしいが、彼によってつぶされた」

「テロ! この時代にテロですか! アッハッハッハッハ」

「それだけではない。いずれ俺たちのトップが活動を再開するとき、確実にやつは邪魔になる。だから早めに手を打っておくんだ」

「ヘエ。コノ感じだと、私ヘの依頼ハ貴方の独断デスネ?」

「そうだ」

「イインデスカ?」

「君はいわれたことをやればいい」

「ワカリマシタ。でも、自信ナイデスネエ、あの赤い死神が相手デハ」

「君も中国随一の使い手の癖によく言う」

 その言葉をきいた中国の男はまた笑い出し、そして今まで笑っていたのがうそのように真面目な顔になり、「確かに引き受けましたよ、コの仕事」と男に言い、店から出て行った。そしてそれを見ていた男は誰にも聞こえないような声でつぶやいた。

「斬虎、パイ・リーチェン。赤い死神もこれでおしまいだな」